harunalove2005-11-06

まず俺は、3人が泣いていることに気づかなかった。
誰も信じちゃくれないか。
普段は使っていなくて、客席からの距離でちょうどピントが合うくらい度が強すぎて、そのうえ乱視が入っていないメガネを掛けていたのが原因だと思うが、そんなこと今さら言っても始まらない。


俺があそこで一言だけ「悠太」と言ったら、春奈も「はい」と一言だけ返し、軽くうなずいてくれた。
そんな資格が俺にあったかどうか、あの時の俺は、自分の中では、悠太になり替わったつもりで廻らせていただいた。
翌朝、ある方に言われたとおり、「自己満足」と言われれば所詮それまでなのだが。


それから
「メッセージにせよ何にせよ、イベントに私的・外的要素を持ち込まないこと
および
イベントを、しんみりしたものにはせず、楽しく盛り上げてやり遂げること
の2点は、事情を聞かされたスタッフとSweetSの間で話し合い、事前に決まっていた」
ことを明記しておく。
(おのれを正当化する目的でこれを書いているのではありません)


しかし、あとで考えると、ああなったら何かしら言わなければ引っ込めない状況になっただろう、3人は。


そして
涙でアンコールを、ネバエンを歌ったのだろうか?
あるいは
泣き崩れて歌えなくなったのだろうか?
あるいは
いったんソデに引っ込んだら、歌えない状態に陥り、アンコールが霧消した?
あるいは
その場の雰囲気や流れで、やはりこのまま“しんみりした状態”で終わる方がベターだとスタッフが判断し、アンコールを取り止めにした?


ある方から、こんな言葉を頂戴した。
ラクーアの後で事情を知った。亡くなった彼を自分も悼む。
でも自分は彼のことを知らないし、あの時点では事情も知らなかったから、アンコールのネバエンが3人の笑顔でめちゃくちゃ盛り上がったので、単純に良かったと思う」



もし、あのネバエンが盛り上がらなかったり、涙でグチャグチャになったり、万が一アンコールそのものが取り止めになったとしたら?
事情を知らないヲタ、そして他ならぬ悠太自身が、果たして何を観たかっただろうか?


前夜からラクーアに向かう道すがらまで考え考え、俺もまたスタッフと同様、この2日間のイベントを、湿っぽいものにはしたくないと思っていた。
3人が事情を知る形やタイミングにもよるが、3人のうちたとえ1人でも衝撃に耐えられなければ、少なくとも大阪のイベントには差し支えが出るかもしれないという危惧を、まずはじめに持っていた。
悠太を知らぬ者、事情を知らぬ者もイベントに参加するのだから、それは絶対にあってはならない。
(ただし信じていただきたいのは、俺があの厄介を働いた理由では絶対にない)


だから俺はKaiさんに会うなり「もしお許しをいただけるなら、もし俺に任せていただけるなら、俺が大阪の最後で春奈に伝える」という出しゃばった提案を持ち出した。それはご遺族の希望と相容れないということで却下されてしまったけれど。


結果的に3人は、気丈に5回の公演を務め上げた。3人は凄いと思う。偉いと思う。素晴らしい根性だと思う。3人を疑った自分を恥じる。
でも、それらの危惧が杞憂に終わったことが結果論であることはご理解いただけると思う。
キャリア2年以上のプロの歌手とはいえ、3人ともまだ14歳の女の子なのだから。


悠太を慕うみなさんが、3人からのメッセージを期待していた、ヲタの側ではそういう心づもり、段取りになっていた
(楽屋内の取り決めでは、その予定は無かった)
ことを、俺だけが知らなかった。


そして俺は、3人が泣いていることに気づかなかった。
もしいきなり春奈が泣いていたら、さすがに廻れなかっただろうと思う。


Kaiさんと春奈との間で想いを伝え合うという大事な作業が終わった時点で、今度は俺が俺なりに、悠太に手向けの花火を華々しく打ち上げてやろうと思った。


前後の事情をいったん脇に置き、ネバエンが最高に盛り上がった点だけを取ると、悠太は喜んでくれたはずだと信じたい。
自己満足でも、自己正当化でもなく、そう思わないと俺は自分を支え切れない。


みなさんの思惑、イベント後のお怒りを伝え聞き、おのれの勘違いを思い知らされ、俺は帰っちまおうかと思った。というより、みんなに会わせる顔がないと思った。
でもそれだと、「また明日」と3人に言った約束が嘘になってしまう(メンバーに嘘を言ったことは、過去にも、これからも無い)。
それに
「あなたも悠太のためを想ってあれを行なったのだから、あなたを責めることはできない。
大阪では、悠太の分も思うぞんぶん楽しんでくれ」
という言葉をいただいたからには、逃げ出すわけにはいかなかった。